「つながりを大切に」
「今、私が関わっているのは幼児期の子供です。」「私が関わっているのは成人期の人です。」といわれる方は、それぞれの役割を担ってはいますが、一方で、あたかも「その利用者さんのすべてを背負っているのです」というように考えていませんか?
利用者さんにとって、それぞれの時期は一生のうちの一つの通過点にすぎません。人の人生はずっとつながっていて、そのつながった時間経過の中で年齢を重ねて生きています。
利用者さんの一生を想像しましょう。利用者さんと関わりのあるそれぞれの時期の、それぞれの立場の人との間で、そのつながりを互いに認識しながら、お付き合いをして連携していくことが大切なのです。
そういうつながりのある方々との連係プレーがないと「利用者さんの幸せはない。」といっても過言ではありません。
障がい福祉は、各領域・各分野の人と人とネットワークによって、より素晴らしくなるのです。
利用者さんに関わる方々とのつながりを、もっともっと大切にしていきましょう。
「福祉は人なり」
福祉領域のお仕事に就くことを志した人は、「何か他人のためになりたい!!」との動機からではないかと思います。
対象が「人」であるというところに、関わりをもつ側としては、常に相手を正しく認識し、人としての尊重理念を心にもち、適切な支援であろうと努力することになります。
この努力の集積によって、日々少しずつ福祉は推進されていくのです。
即ち、福祉の推進は諸制度の適切な活用のもとに、人が人によって支えられ展開し、現実を創り出していくのです。
障害者支援に絞ると、障害のある方々について、一人ひとりの特性を理解したうえで、人として出会うことになります。その際、支援者として十分な気配りをしながらの出会いをしたつもりが、相手の反応が予想する姿でないことも多々見せられます。ここでシンキングすることが大切です。
知性の弱さが障害のためにありますから、感性をフル稼働させて反応するのが特性からの表現です。ならば、どこがずれたのか事象一つひとつに対して、真摯に考えをめぐらせて、要因に気づき、捉え方と対応の修正を図ることになります。この試行錯誤の結果は、しっかりと相手に適正な支援を導き出すことを得させてくれるはずです。
動機となった、己の心根を失わず、しっかりと相手(人)と向き合いながら、人と人との繋がりを創り・保ち、お互いに笑顔の多い一日を重ねることになる努力です。
まず、己が福祉を担う者としての立場を自覚しましょう。とはいえ、一人では何もできませんが、お互いの力を結集すれば、大きな力になります。助けあいながら、人と織りなすなかで、その力の結集によって福祉は推進されていくのです。
あなたがその一人なのです
「主体は本人」
「人はだれしも幸せな人生を歩みたい!」また「幸せな人生を歩んでもらいたい!」と思っています。
障害のある方々にも同じことが言えます。しかし、障害のある方々にすべてを託してもその実現は困難です。ゆえに支援は不可欠です。
しかし、まわりの者の思惑だけで支援サービスを組み立ててはいないでしょうか?
特に、自閉症の方は、その特性からいろいろな行動を見せるので、本人の気持ちをキャッチすることが難しく本人と周囲の間で気持ちの行き違いが生じやすいのです。
「なぜこんなことをするの?」「なぜこのようなことをされるの?」という思いが積み重なって、まわりが「この道がよいのだ…」と勝手に決めて進めていくことになりがちです。そこで、私たちは「これでいいのだろうか?」と自問する姿勢が必要です。
人の人生は、まわりが決めることではありません。主体は本人なのです。一人の人間として、その人なりの気持ちや意思を持ち現実を生きているのです。
人が生きる道は本人なのですから、本人の気持ちや意思を大切にしていくことが、まわりの私たちには求められるのです。
私たちは、根本的な間違いをおかさないサービスの在り方を模索していくことが責務なのです。
「障害のある方と出会うときの基本とは」
1.障害を正しく理解しよう
「障害を正しく理解する」とは、診断を受けている障害のことを勉強するということです。知的障害なのか自閉症なのかADHDなのか 等、そういう障害名がついていたら、その障害について勉強しなければなりません。
障害によって生じる行動は「やりたい」とか「やりたくない」とかの情緒レベルによって生じる行動ではないからです。また同じ障害名でも、見せる行動は異なることも承知しておきましょう。
障害の軽い方や重い方がいるように、障害のレベルによって見せる姿も違います。ですから基本的な障害を理解し、そして本人の現実の姿を通して、更に深く理解していくことが重要です。
2.ひとりの「人」としておつきあいをしよう
私たちのまわりの人は、すべて同じ人間です。子供であっても高齢者であっても、障害があっても健常であっても、人としては対等なのです。
この当たり前のことを忘れてはいけません。この意識がないと、人との真の出会いは成り立たないのです。
常に自分をふりかえる習慣が大切です。
3.他人と比べないでおこう
個人を捉えるときに、他人と比較してはいけません。発達の仕組みは同じでも、障害の部位や程度により個々人のプロフィールは違うからです。
障害を的確にとらえるために知識を持つことは大切ですが「この人はどういう人なのか」を捉えるときに、他人と比較するのではなく「個別性」に焦点を当てるのです。それが支援者の立場です。
このように1~3の基本を得ることにより、その人の「障害以外のこと」と「障害があること」の両者を本当の意味で受容することができるようになります。
そのプロセスを通して、自分自身は成長していくのです。自分自身の成長なくして、利用者さんの成長はありません。
「発達を知りプロフィールを描き
アセスメントをていねいに」
発達には道筋があります。
人の発達は、段階を踏みながら進んでいくものですから、飛び越えることはありません。
また、「発達が遅い、早い」と親・家族は一喜一憂しますが、発達は個別のことですから、人と比べる必要はありません。
大切なことは「発達がどのように進んでいるか」なのです。つまり「その人その人のペースで良い」ということなのです。
個々人のプロフィールに凸凹がある場合、個別性の観点から「ここは限界かもしれないが、ここは芽が出てくるかも…」ということが描けると良いのです。
ですから、個々人のプロフィールを承知しておくと「今どうあるべきか」の物差しが持てるようになり、課題が明確になってきます。
個別支援計画は、それぞれ個々のプロフィール・アセスメントから課題を明確にして、日々アプローチをして、記録化していく最も大切な支援の基本となるものです。
このように、私たちは個別性の観点から障害のある方々と出会うと、力が入りすぎることもなく、お互いに気持ちが楽になるのです。
関わるものの落とし穴は障害特性による決めつけです。「知的障害だから知的に弱いからしょうがない」「自閉症だからこだわる」というような短絡的な見方です。こういう見方はマイナス面を強調する見方です。しかし、個別性の観点からみれば、「ここは弱いが、ここは強い」という見方に変わり、あせらず向き合うことができるようになるのです。
ですから、関わるものは、利用者さんのプロフィールを描き、アセスメントをていねいにおこない、その人の持っている力を最大限に引き出す必要があるのです。
障害のある方々の、今のあるがままの姿を捉え、障害特性や障害程度を知って、その人のプロフィールを描き、アセスメントをていねいにおこなうことは、その人を知るうえで欠かせない、私たち支援員の義務なのです。
「知的障害のある方々との
関わり方」
1.支援員は感覚を研ぎ澄まし、
障害のある方々の笑顔を引き出しましょう
人は感覚器を通して受けた刺激を脳に送り込んで認識をしていきますが、障害のある方の場合、その刺激を捉える際に特異さがあったり、逆に丸ごとすべてを取り込みすぎていることがあります。
しかし、自分にとって快か不快かはしっかりキャッチしています。ただ、感じ取ったことを表出することが弱いため、利用者さんがどう感じているのか、何を考えているのか、がわからないことがあります。
その場合、支援員は、障害のある方々の発信に対して自分自身の感覚を研ぎ澄まして相手を正しくキャッチする必要があります。また、障害のある方々が「快い」と感じ「笑顔が出る」状況を多く作ることが支援員の配慮すべきことになります。
なぜなら、マイナスの人間関係では、人への安心感や信頼感は育たないからです。プラスの関わりを通して、人は関係の豊かさや「信頼関係の深まり」を獲得していくからです。
支援員は「相手の立場から見た出会いの大切さ」を改めて心得としていきましょう。
2.「食事・睡眠・排泄」の生理的三原則を整えることは身体的好調
メカニズムの基本。個にあった姿を捉え留意していきましょう
利用者の方々が「快食か?快眠か?快便か?」をもう一度振り返ってみましょう。
人の身体はこれが基本です。当たり前すぎて、重視しなくなることは支援員のマンネリズムを表しています。
なぜ食べられないのか?なぜ断眠をするのか?なぜ便秘なのか?どのような配慮が必要なのか?どのような工夫が必要なのか?どのような手立てをしていこうか?
これらを考え、実行していくのが支援員の仕事です。
「この人は食べない人なのです」「寝ない人なのです」「便秘なのです」という割り切りは簡単にするべきではありません。
身体的快適さを得てもらうために、再度、振り返って適切な対応を考えていきましょう。
3.こだわりについての関わり方
「こだわり」は「何にどの程度執着しているのかな」という視点を持つことが大切です。
「~はしません」「~は終わりです」と言葉で指示をして行動が集成できる人はきわめて少ないでしょう。
大切なことは「こだわりの事象と程度を捉えること」からです。それに対して修正プランは持ちますが、それを強行するのでは無く、「こだわりに付き合う」ということを考えていきます。
つまり、おつきあいをしながら、「転換・誘導」に応じられるように図りますが、個の特性の一つでもありますから、それには人間関係の構築ができていないとなりません。
その人間関係の構築こそが共に歩む道を創ります。
「一緒に付き合って一緒に楽しんで切り替えていくこと」
「こだわりに少し付き合って、それでおしまいに持っていくこと」
これが、本人にとっても願うところなのだと考えて、人間関係を深める契機にしていきましょう。
4.集団の力を活用しよう
人は個と集団の力の相互作用で育ちます。
集団の力は「グループダイナミクス」と言いますが、集団の力が良く作用するのは意欲です。やろうとする気持ちは、集団の力が相互に働くことによって個々が動機づけられ高まります。だからこそ、適正集団の中での本人は「みんなやっているから自分もやってみよう」となり、支援者は「みんながやっているから、あなたもできるでしょう。がんばりましょう」と雰囲気をつくり、モチベーションを高めていくことが可能になります。
繰り返す中で「集団の中の自分」「集団の影響を受ける自分」があり、社会性が育ちます。
ここで大切なのは、属する集団です。利用者さんが「集団から刺激を受けないお客さん状態」だと、グループダイナミクスの意味は機能できていません。よって、表情は乏しく活力が見られなくなり、だめな自分を感じるようになっていきます。
支援員は、本人の属する集団を、本人にとって適正にしていくと同時に、集団の刺激が本人に伝わるように、促しや問いかけや承認を頻繁にしていきます。まわりから繰り返し賞賛を浴びせられるようになれば、本人の喜びと意欲が育ち、人との信頼関係もさらに深まります。
その結果、個と集団の相互作用が成り立ち、よって「みんなでがんばろう」の雰囲気を持つ、より良い適正集団がさらに創られていくのです。
5.信頼関係を育てよう
利用者さんの質問や疑問にはどのように答えていますか?面倒くさがらないでその方に分かるようにきちんと答えていますか?わかることはわかるように答え、わからないことは「一緒に学ぼう」と答えます。いい加減なことを言っていると、いい加減な学習をし、職員は当てにならないと思い信用できずに信頼関係は育めません。 「全部答えなければならない」のではなく、「一緒に考えよう、学ぼう」という姿勢が大切なのです。
質問をした利用者さんは「自分に対してこの職員はどう思っているのだろうか?」と試しているのだと思っても過言ではありません。適当に扱われている、適当に否定されていると思えば、自分を閉じていき「職員はあてにならない、信用できない」と捉えます。理屈や理論ではなく感性のアンテナで人を判断しているのですから、丁寧に関わる姿勢が必要なのです。
自分の扱われ方に非常にシャープになっている利用者さんです。そのことをよくわきまえて、表面的な関係の良さで判断せず、真の信頼関係を育てる努力をしていきましょう。
「知的障害のある方々の自立」
-「能力内自立」を求めて-
1.自分の持っている力を十分に発揮して生きること
知的障害は脳の器質的な障害ですから、一人でできることはどうしても限定されます。ですから、一般的な意味での自立は難しいのかもしれません。
しかし障害があっても、人として「自分の持てる力を十分に発揮して生きる」ことが自己実現の道ですし、それは十分に可能です。
それを私たちは「能力内自立」と捉えています。その姿は、その方の能力を精一杯発揮している絶対評価に立って捉えます。
したがって支援とは、「知的障害のある方々が持っている力は、各々ダメージの後遺症のために異なりますが、それを十分に活かして生きる姿」を求めることなのです。
持っている力を活かしながら、社会保障の中で暮らしを確保することができれば「能力内自立とし、それで十分」ということになります。
私たちは、「本人に対して求めること」と「まわりの者たちが担うべき役割」を明確にする必要があります。
障害のある方々が「自分の持てる力を十分に発揮して生きていただくため」に、私たちが行うべきアプローチを、少し考えてみたいと思います。
2.自立の基本となること
自立とは「自分の持てる力を十分に発揮して生きること」と申しました。その姿の具現のためには、どのような点を整えて、力にしていくことが必要かを考えてみたいと思います。
まず「生きる」現実から、誰でも共通に身体面での健康があがります。丈夫な身体を得ているということです。勿論、彼らの中には合併症のある方もおられますが、その症状が医療との連携のもとにコントロールされ、日常的には大きく気にかけずともよいというコンディションを備えていれば、承知をすることで良いと考えます。丈夫な身体を得る際の基本は、食事・睡眠・排泄といった生理的三原則の整えは必要です。これらを整えるためには、適度な運動量を確保し、規則正しいリズムのある生活の実績が重要になります。
次にあがる点は、各人が自分の行動に「自信」をもって対処している姿です。これは児童期から培ってきた人との関係性を基盤にして、信頼関係を深めて得ていくものです。その内容は「知的障害のある彼らが、人として認められていると感じること」「認められて安心を得ていると感じること」を通して築かれるのです。こうした関係は、日常的な場面での承認・賞賛によって深まっていきます。つまり、知的障害のある方々が喜びを感じ、それに共感する関わる人との関係で深まっていくのです。
そこでの留意すべきことは、彼らが遭遇する事柄のひとつひとつが「過欲求なことではないか」また、「過保護な中にはないか」という点での確認が必要なように思います。
ここでの要になることは、知的障害のある彼らと関わる人が、尊重した関係を築くことによって「本人が快い」と感ずる実績を横たえて、関係を形成していくことになるということです。
こうした関係性のもと、彼らは事柄のひとつひとつで「達成感」「完成感」を得ることができ、その結果「自信」を得ることができるのです。その小さな自信の累積が大きな自信となり、事柄に向かう意欲や態度の形成をし、新たなことに挑戦しようという気持ちも高まっていくのです。すなわち、小さな事柄であっても成功体験が積めるように支援していくことが重要なこととなるのです。
ただ、知的障害のある方々は、自分の力を過信する傾向もあるので、彼らが理解できる適度な枠を示し、その枠の中で我慢する力や周囲の理解をはかる必要があります。そうした中で「自己コントロールをする力」を育て、枠の中での自己選択・自己決定の体験を豊かにしていく必要があると考えています。
「たのしい笑顔の多い日々を」
平成29年が始まります。そしてくず葉学園は4月に創立33年目を迎えます。
20歳代でスタートした方は50歳代に、30歳代は60歳代にと、年齢を重ねてきました。年を重ねることによる身体の弱りに気づかされながら、一人ひとりが一日の暮らしの中で、自分を発揮し、出会う事柄を通して満足に近いものを感じてもらえるように支援をしましょう。
まずは健康、そして事故の無いように安全に留意し、笑顔の多い日々を創りましょう。
平成26年度・27年度・28年度は、全員で旅行を組み楽しい時間を経験しました。利用者の皆さんの興味・関心・体力を中心にいくつかのグループに分かれて、各々のグループに適正になるように組み、みなさんが楽しめるように支援の質も上がっています。
毎年、参加された利用者さんはとても満足されています。この高い満足度を得た因子としては、各々に適した計画になったことだと捉えます。
「みんなが一緒が是」という感覚を一歩踏み込み、メンバーの個々に着目し、各々に適した計画であってこそ、個が得る満足度アップにつながるのだと思います。
60歳を超えてからのこの相違度は、徐々に明らかになります。その実態を捉えたうえでの現状を適正に認識し、その視点に立って保持し、利用者各々さんが「今日も楽しかった」と感じてもらえるように支援を進めましょう。
その実際は日々の過ごしにあり、集団活動は個を活かすための力であり、個が活かされないのでは有益とはいえません。ならば、個別対応で良いのかと問うと、やはり仲間と共にあることによる安心と満足があるのです。この集団と個の対応留意のバランスこそが大切になります。
彼らは自分の心情をストレートに表現しますから、表情・動作を捉えると理解できます。この視点で彼らの内面をキャッチし、利用者の皆さんが笑顔の多い暮らしを過ごしていただけるよう努力していきましょう。
「共感・共育・共生を考える」
福祉現場に働くわたしたちは、「支援をしている」「世話をしている」「面倒を見てあげている」と思いがちですが、最終的には、私たちが一番育てられ、大きくなって、幸せをもらっているのではないでしょうか。
その実、人が対象であり、関わることを通した双方があり、お互いが影響しあって関係性は構築されます。これが福祉の現場です。この職業選択をした自分があるはずです。人生をいかに生きるかを生身の人間を相手に学ばせていただき、自分が育てられているのです。共感し、共に生き、共に育つ、そして人の道の歩みを貫くのが現場なのだと思います。
「福祉は人なり」と申します。人に対して、人でしかできない営みだからです。ここから福祉は始まり、そして福祉の究極なのです。
福祉の道は素晴らしい道なのです。人としてお互いの幸せに向かって関係しあい、自己実現という大きなテーマに向かって人生を歩いていくわけですから、お互いに「いい人生だった」と言える道になれば、すごいことだと思うのです。
現場はいろいろな人間の集まりですから、良い話ばかりではなく、つらいこと、悲しいこと、手に汗握ること、いろいろあります。こういう場面でこそ、人としての生き方の原点を確かめての判断が求められるのです。
多くの人・事に出会いながら、自分の生き方として、福祉に携わる職業人としての在り方を学んでいきましょう。
「行動障害のとらえ方と対応について」
行動障害は、不安や緊張や混乱の中で、攻撃・自傷・多動・固執・不眠・拒食・脅迫などの講堂上の問題が出現し、日常生活が困難になった状態と言えます。
この状態を改善するには、まず障害特性の理解が前提条件となります。人は誰にも自己防衛本能と自己存在確認の本能があるので、自分がどのような状況にあり、その本能を満たしているかどうかを捉えます。そして、その物差しで状況に反応していく力も備えています。
そこで、知的障害のある方は、状況の理解が自己本位となり、この基本的物差しが行動の起こりを握ることが多いのです。なぜならば、知的障害は脳細胞の損傷に起因しますが、特に知性のダメージですので、本能的にキャッチする完成は健在なのです。その基本を踏まえ対応を考えていきます。
知的障害や自閉などの特異な行動現象だけに対応していくと、増幅させてしまう結果でもありますので、その発端となった利用者の特異な行動の意味を追求していくことが大切になります。
行動改善を図るためには
1.障害特性をとらえること
知的障害や自閉などの特性を承知すること。その特性の強さ・程度・度
合いを把握することが基本です。
2.利用者の気持ちをとらえること
出会い・関わりが本人にとって快の状況になるようにします。
障害特性を理解して受け止め、本人が受け止められている実感を持つこ
と。
本人の力に応じた許容範囲を決めること。過欲求によりコンプレック
ス・フラストレーション・ストレスが鬱積することがあります。逆に、
過小評価による依存過多傾向に気をつけましょう。
3.利用者の行動の理解をすること
利用者の認知レベルに合わせた対応をします。
利用者の運動量を調節して、生理的快適さ(快食・快便・快眠)を創り
ます。
職員が穏やかに接することは当然です。職員の関わりでコンプレック
ス・フラストレーション・ストレスをつのらせ過ぎないように配慮しま
す。
利用者のレベルに応じたコミュニケーションの方法を工夫してくださ
い。
利用者の言葉と行動が一致しているかどうかにも気をつけます。
4.行動障害の表れ方をみて対応を整理すること
利用者の障害特性を把握し、利用者の行動を肯定的に好意的に分析して
解釈します。
生理的快適状態の基は、生理的リズムを整えることですから、しっかり
と留意します。
構造化(場面・スケジュール・人)の手法を活用して、利用者がわかり
やすい状況をつくります。
コミュニケーションをとり安心できる人との関係をつくりましょう。
必要に応じて医療からのアプローチを図ります。
以上のチェックポイントを振り返り、自分たちに不足していることは何か?どのような工夫をするべきか?それを試行錯誤していけば、行動障害の改善は可能です。
目標を持って歩むことが支援職の誇りであり、やりがいだと自覚しましょう。
支援者としての在り方は!
人のしあわせ創りを支援する立場にある支援者は、特に知的障害のある方にあっては、とても影響が大きく、重要な位置にあることをふまえておかなければなりません。そこで、その支援者としてのあり方を考えてみたいと思います。
まず支援者は、「自分を知ること」からです。厳しいようですが、自己把握をし、自己理解をして己を捉え、そこから支援者としての力量を高める歩みにしていかねばなりません。
自己確認するポイントをあげてみますので、各々で確認し、己の目標を掲げ挑戦するあゆみでありたいと思います。
1.思想の確立~一人ひとりを「人」として
尊重することはできているか~
当たり前とされる「人権尊重」の思想を知的障害者との出会い・関わっている場面でどれだけ具現化しているかです。
2.人の価値観の確立
人間の価値は「その真摯に生きることに向かい、心豊かに精一杯生きることそのもの」にあると捉え、相対的な観点・画一的な物差しの観点でない、人の見方の確立です。
すなわち、個々人を絶対評価の上で人の価値が決まるという考え方を確立させることです。
3.実践への心得
支援のあり方が十分確立しているとはいえません。そこで、実践の場にあって適切な支援のあり方の模索が続けられなければなりません。
自分は何を役割としているのかを明確にしながら挑む必要があります。個々に応じたアプローチ方法を模索し、継続していくことが求められます。
また、障害のある人は、たくさんの繋がりの中で生きているため、支援者が中心となって周囲の人との連携を図ることが求められるのです。
4.療育者・支援者としての構築
~豊かな人間性・科学的な視点・旺盛な実践力~
支援者には、みんなが幸せに暮らす社会の実現に向けて、共に努力していくことが求められます。その実現に向けて、支援者に求められることは、
①優しさ・暖かさ・協調性といった、人と和していける豊かさ
②障害のある人の様子を的確に洞察し、方針を持てる知識と科学性
③障害のある人と共に働くことで進める、実践への意欲と行動力
です。
人を育て、共に暮らす立場にある支援者には、これらの点を自覚し、障害のある人の自己実現のために、努力することが望まれるのです。
実践力の構築
実践力を構築するためには、
1.基本を捉えておくこと
2.個を捉えたアプローチを考えること
3.家族との連携を図ること
4.医療との連携を実践すること
5.職員としてのチームワークからの意識を持った行動をとること
が求められます。
初対面から1~2か月は、本人を知ることが主題となります。
年齢や障害・生活史など一人ひとり背景が異なることを承知し、一人ひとりを正しく知ることが必要となります。この作業は、「現状把握」と言います。ここでは、「よい・悪い」の評価は加えないで、本人のありのままの姿を捉えることになります。その視点は、「生理的な事柄の実態と健康状態」「快・不快のジャンルとレベルの傾向」「わかる力とその行使度」「人への信頼感の程度」「障害からのものの度合い(こだわり・衝動性・てんかん等)」「課題となる行動」などです。
このように各項目の状態を捉えることにより、現状におけるプロフィールを得て、本人のトータルの姿を把握するように努めます。
「現状把握」を資料として、個別に支援目標を設定していきます。課題となる事項が多くあがる方もいるでしょうが、一挙に課題と意識すれば解決するということではないため、本人にとっての必要なことから選定していきます。
この場合、本人の難易度や時間のかけ方と度合い・環境調整・人への安心感に関するものなどから吟味していきます。この際、初期早期に着手しなければならないとする項目を優先させて取り組みます。
実践力を高めるためには、「知識の研鑽」と「実践の取り組み経過を検証すること」の双方の構築が必要となります。知識についてはベースになる事柄は初期に学習します。その後、事例に出会う度にその件を中心に文献をひもとき掘り下げていきます。
実践の検証は、課題が解決したあとはもちろんですが、方針を持って履行し、3か月くらいは継続したところでその間を振り返ります。その際の振り返り点は、知識との照合です。経過が順調ならば捉え方・アプローチとも是として継続し、そうでなければ、どこがずれたのかをしっかり検討します。そして、捉え方・アプローチの修正に入ります。その際の検討資料はデーターです。そこに「なぜ?」を考える分析力が求められます。そのために記録は重要になるのです。
この作業を通して、知識の応用力とアプローチの適格性を得ることになり、そのトータルが実践力として構築されていきます。
実践力を高めることを意識し、事例を大切にする姿勢が前提として必要となります。1事例を徹底に検討した実績は、他の事例にもそのプロセスが応用されていきます。
キャリアが活きる経過でありたいと思います。
職員としての振り返り
職員として自分を省みる際に必要な視点には、
1.職業選択にあたって、自らの動機の再認識と障害のある人たちの幸せに
向けて、職員としての役割を意識すること。
2.他人に好感をもたれる自分をつくっていくこと。
3.健康管理・精神衛生を自分でコントロールすること。
4.組織で働いていることをわきまえること。
5.学びの場面を活かすこと。
6.貪欲に自分を伸ばすこと。
7.キャリアに応じた専門職としての歩みをすること。
8.悔いのない、やりがいのある仕事をし、充実した生活を送ること。
があります。
職員には、これらの視点に留意しながら、常に自分を省み、謙虚な姿勢で障害のある人と関わることが求められるのです。こうした視点を持ちながら、一人ひとりの職員が職員としてのわきまえをもって、障害のある人と出会うことが出来れば、障害のある人との日々の出会いの中で見られる言葉遣いは変わっていくものです。
職員はその自分の姿を省みることによって「今の自分はどんな気持ちなのか」「人として尊重する気持ちで利用者と関わっているのだろうか」「他人に好感をもたれる自分なのか」を自問自答し、自己研鑽していく必要があるのです。
人は経験を積む中で、迷うこと・悩むこと・壁にぶつかることがいろいろあります。こうした場合には職業選択にあたって、自らの動機を再確認するように努めます。ここでは「この仕事に就こうと考えた時の自分と今の自分は志において変わったことがあるのかどうか」「そしてそれはなぜか」を考えてみることが大切です。
そうした中で、初心に戻り、今の自分を捉え、志を高くして前に進んでいくのです。
支援員として、知的障害の人たちと関わっていて、「うまくいったな!」と思えるときと、「なんでうまくいかないのだ?」と思うときがあるでしょう。
「うまくいった!」と思えるときは、支援員である自分の描いたように進んだということでしょう(勿論、相手のことを考えたうえでの進めを予定している)。
しかし、逆にうまくいかない場面での、支援としての自分はどんな状況にあるのでしょう?
アプローチしていることを、どんどん強行していないでしょうか?例えば「早く早く」「きちんとして」「ここを持って」「指を使って」…etc、と。
もちろんこれらの声かけは、進めようとしていることに必要な対応でしょうが、逆の反応になっているならば、相手のスピードやわかり方・指の機能性にマッチしない、支援員が描く目的的なフレーズを連発していることになります。これでは彼らは、「急がされている、やばい!」と感性が受け止めて、その人なりの行動をとろうとするのですが、期待されている行動にはならず、次の行動は防衛になり(自分を守るために)、結果的に抵抗や自傷行動といった課題行動で表すに至ることになります。
支援員は、彼らの初期の反応はすぐには気付けず、押していく対応を続けがちになります。この過程の中で増々双方が悪循環に入っていくのです。
そこで、当然支援員は、自分のアプローチが相手に適切ではないことに気づいていきます。それは、支援員の「早く早く」とか「指を使って…」というアプローチは、自分のテンポや指の使い方を基準にしていたこと、相手のテンポ・指の機能性などには注視しておらず、「これ位あたりまえ」という進めであったという内容です。気づいた支援員は「徹底して相手に合わせる」ことを考えていくことになります。
人は各々多様です。知的障害のある人にあっても同様です。「知的障害があるから、分からない」、「できることが少ないから、教えなければ・支えなければ」と捉え、気づかないまま「上から目線の対応」になってしまっている際は、彼らは自己存在の確認を対等の位置づけで求めてきますし、シャープな感性でジャッジし、自己防衛手段として、いろいろな行動で示してくるのです。
自分の思うことを的確に表現するには、言葉が不十分な障害特性もあることから、彼らの行動から何を表現しているのかの洞察は不可欠になります。
支援員としての己は、利用者の各場面で適切な関わりになる模索を、続けていかなければなりません。
難しいことですが、模索を続ける中から、人の多様性について知ることにもなり、己のうちに貯えられ、許容域が広くなります。
知的障害のある人は、言葉だけでなく、行動で気持ちを表現することがあります。しかし、支援者の対応に対して文句を言ったり、クレームをつけたりすることは少ないです。
そうした人への支援では、つい彼らの特性を理解することもなく、彼らの気持ちに共感することもなく、彼らの思いに応えていくこともなく、ただ行動に見える現象の是非で対応することになりやすいのです。それでは支援とは言えないでしょう。
私たちはせっかく支援という仕事を選択したのですから、しっかりとその人の行動の背景や内面を洞察する努力をして、できるだけその人を間違えずにキャッチする力を備えたいと思います。
そこで、支援者として働く立場を活用し、人への洞察力を高め、ひいては自らの人間性と専門性を高めるようにしていきたいと思います。なぜならば人と人との出会いと付き合いの中で支援は進みます。一方通行ではないところに「己を磨く」が課題として登場すると思うのです。
その実際の例として、障害のある人との出会いは、支援者自身の足りなさを気づかせてくれるものになるのではないでしょうか。彼らとの出会いを通して、特にうまくいかない状況で「自分はどういう点を磨かなければならないか」を考えさせられることで「充実した自己の歩みをしていくこと」に繋げていけるのではないかと思います。
彼らとの出会いを通して己の気づきを促していけば、当然、己を伸ばすことに貪欲になっていき、キャリアに応じた専門職としての歩みが可能になっていきます。そしてこれらを「着実に積み重ねていく」ことが、広く大きくは自分自身の「悔いのない人生」の歩みに繋がるのではないかと思います。
支援員として働くことで、障害のある人とその家族によって育てられている自分に気づき、すぐには到達できませんが、振り返って得る「自分が変革されていること」を実感とする喜びがあるのではないかと思います。
障害がある人との出会いによって、自己実現が果たされ、成熟していく自分に気づき、人としての価値観の拡大が図れているでしょう。このことが福祉の仕事の醍醐味そのものといえるでしょう。
出会いを大切にして己改革への挑戦に入りましょう。
みんなおなじ・みんなちがう
私たちはだれしも「人」であり、「人」が構成する社会の中で暮らしています。ここでは「人」という大きな枠組みの中で、「みんなおなじ・みんなちがう」ということについて、考えてみたいと思います。
私たちは「人」において、「みんなおなじ」とはどういうことなのでしょうか。「みんなおなじ」に共通することとして、「人であること」「親から生まれたこと」「人としての権利をもつこと」「欲求をもついこと」「夢を抱いていること」などが挙げられます。これらをまとめてみると、私たちはどんな人であっても人として生きる権利を持ち、夢を持って生きている人であることがわかります。
つまり、私たちは、人として生きているという現実においては、みんな基本の部分が同じということです。けれども、同じ人であっても顔が違ったり、背格好が違っていたりします。また、得意なことや不得意なことも違っています。こうして考えてみると、私たちは「人」という枠組みでは「みんなおなじ」だけど、各々の内容を見ると「みんなちがう」ということなのです。
「あなたはどんな人?」「あなたはどんなことがしたいですか?」の問いかけに一人一人が答えていくと、同じ「人」であってもだれ一人同じ人ではないことに気づくでしょう。つまり「人」は人としては同じであっても、一人ひとり違うということが明確になっていくのです。
人を捉える視点を「みんなおなじ・みんなちがう」におくことは、障害のある人への理解をするための出発点になるのかもしれません。そこでまずは「同じであっても違っていること」を認め、一人ひとりの人を大切にする気持ちを持つことから始めてみましょう。
そうした気持ちになれば、障害のある人たちが私たちにそのことを教えてくれていることに気づくかもしれません。障害のある人との出会いを通して、私たちはそのことに気づかされ、人として豊かに生きる道を知っていくのかもしれません。
障害のある人との出会い方の心得
~かかわる上での留意~
障害のある方との出会い方は、ご本人に大きく影響を与え、その方の生き様に関与する程ですので、十分心構えを持つことが必要です。そこで障害のある人との出会う際の、かかわる側の留意点をいくつか心得としてあげます。
1.一人ひとりに着目すること
障害の様相や程度は、その実態は一人ひとり異なると捉えます。故に個々の障害の程度や状態・生育歴を把握し、個々に応じて関わっていくことが必要になります。そこで、個々の実態把握に努め、個々の気持ちを受容しながら関わる必要があるのです。
障害のある子供や人への療育支援においては、概論は持つとして、現状に当てはめるのではなく、個に応じた関わり・展開を心掛ける必要があります。
2.感性が鋭いことを大切に
知的な障害があっても、感性はたいへん鋭く豊かです。障害のある人は、快も不快もすべて敏感に感じてしまうため、彼らにとって快の刺激の多い生活環境をつくることが必須となります。
そこで、彼らが安堵できること・喜びを感ずることを多くしていくことが必要です。
一方で彼らは、自分が感じたことを表現することが上手ではありません。そのため、彼らの示した行動を介して、彼らの気持ちを洞察し、気持ちの共有が図れるようにする必要があります。
3.興味関心を引き出す
その人が見せる興味関心は、その人の自発性の源泉になります。そこで、その人との関わりを通して、興味関心のあることを観察し、見つけ出すように努める必要があります。
さらに、その人と関わる際には、ただやらせればよいのではなく、その人自身が了解して取り組む状況をつくることが大切となるのです。そこでは、目的意識を持たせ、楽しく取り組める工夫をし、関わることが大切です。
4.絶対評価の視点を持つ
その人のやる気を育て、認められることで喜びが循環していくためには、その人の現状レベルを把握し、そのことが出来たら承認するようにしていくことが大切となります。そのためには、その人の力を捉え、その力を分母として、やれていることを分子にする捉え方、すなわち絶対評価に立って捉えるという視点が必要です。
彼らの評価はこの方式で良いのです。